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June 07, 2005

『縛られたプロメーテウス』 億土点

演出:億土点(Power Doll Engine)
場所:野外劇場 有度
出演:Power Doll Engine
2005年06月04日 19:30~

劇場の写真ばかりでも変化がないので、今日はネコ写真にしますよ。背景は茶畑。さすが静岡。

さて、実際に上演される『プロメテウス』を見るのはこれが初めて。
期待半分、不安半分で見に行ったのですが、大当たりでした。こういうの、大好きです。最初に見た『プロメテウス』がこの作品で良かったと思いました。

この舞台、主役であるはずのプロメテウスは劇の冒頭で岩山に磔となり、上演の間じゅう縛られっぱなしです。主演が身動きできない劇。その間、観客を飽きさせずにどう見せてくれるか。
四足の鳥(天馬)に乗って登場するオケアノス、牝牛に変身したイオ、地の底へ沈むというラストシーンを、どう表現しているか。
山形治江さんの「ギリシャ悲劇 劇ガイドブック」(れんが書房新社)によれば、
「話のスケールが大きいだけに、失敗すると無惨」
とまで解説されていましたが、この日は大成功でした。

観客が劇場に入ると、プロメテウスはもう岩山に鎖で繋がれています。
舞台上には、台車に積まれた大小のオーク樽。刑場となった、コーカサスの岩山ですね。この日、野外上演にもかかわらず静岡方面は雨模様でしたが、そんな心配は無用。オーク樽の山頂からは水が流れ落ち、ドライアイスの煙とともに、舞台まで水で浸していたのですから。

台車の足元には石のようにうずくまっているコロス(オケアノスの娘たち)。劇の冒頭は省略して、海の娘たちがすでにプロメテウスを心配して現れたところから始まるようです。

劇中で主に使われていた音楽は、ブルガリアン・ヴォイスに似た、バルカン東部か黒海沿岸の民謡風の曲でした。地理的にも合っているし、太古の世界を思わせるような雰囲気もよくなじんでいると思いました。

鎖に縛られたプロメテウスは、若い男性が演じています。きれいな体をされていたので、プロメテウスというよりは聖セバスティアヌスを連想しました。コロス達は、らせん型の骨組みの入った、黒いドレスのような衣装を着けています。奇抜な形ですが、キプロス演劇協会がよくこんな衣装を使っているな、なんてことを考えました。海の渦のようでもあり、巻貝のように固くふたを閉じて見せる演技もできます。面白いです。

5メートルもありそうな竹竿で岩山を叩いて脅したり、物を食べてばかりいるクラトス(権力)とビアー(暴力)、寝たきりの爺ちゃんが無理して出かけてきたみたいな老オケアノス(布団の上にに仰向けで引きずられてきた)。メガネをつけてスリッパ(くちばし?)を銜えた、そいつが四足の鳥ですかい?

いちばん驚いたのは、白い牝牛に変身したイオ。
男性の声でマイクからイオの台詞が聞こえてきたかと思うと、客席後方の高い位置からイオ本体が登場。でかい! いわゆる百足獅子(むかでじし)というタイプの獅子舞で、胴幕の中には4~5人ほど人が入っていそうです。牛の顔はついていませんでしたが、頭に当たるところに大きな白い牛の角があり、ゆっくりと体をくねらせながら、舞台まで場内を練り歩きました。イオを追いかける役回りの、翅の長い虻の人形も登場。

仕掛けに脅かされるというのはちょっと口惜しいですけど、これにはヤラレました。
「うわ! イオ来た!」
「虻も来た!」
って、思わずつぶやいてしまいましたもん。

舞台上でも虻が飛び回り、コロスの一人が殺虫スプレーを吹きかけて追い回す。虻役の方が濡れた舞台で滑って転んで(わざと?)観客の目は釘付けです。岩山ではプロメテウスがイオの行き先を説明してくれてるのに、なんというか、イオも観客も誰も聞いちゃいません。(笑)
こんなんでいいのか、『縛られたプロメテウス』 by アイスキュロス!(答:たぶんいい)

プロメテウスはどことなく頼りない感じで、ゼウスへの強がりが本当にただの「強がり」に聞こえてしまうし、コロスはふにゃりとした喋り方で、あんまり緊張感がない。オケアノスは立ち上がることもできない老人だったし、終盤にゼウスの命令でプロメテウスを脅しに来るヘルメスは、かなりはっきりと分かる“どもり”でした。プロメテウスといえば智恵者、ヘルメスといえば立て板に水の口達者、といった、ふつうに登場人物からイメージされる定石を、どれも少しずつ外して来ています。
この「ずれ」の面白さって、ギリシャ悲劇というよりは、アリストパネスの喜劇に出てくるような戯画化に近いんじゃないかと思いました。

崩れる岩山は、舞台を覆う銀色の布と青い照明で、洪水に飲み込まれるような表現で締めくくられていました。

問題提起だけで解決がない芝居なので、上演によってはスッキリしない幕切れに感じることもあるらしいですが、こんなに面白くて楽しめる作品に仕上がるとは知りませんでした。初めに舞台装置を見たときには、エピダウロスの劇場で開演を待つときに似た期待感がありましたし、イオの姿を見たときには、この劇がギリシャ神への奉納劇だったということも、実感として感じることができました。この舞台を見ることができて嬉しかったです。


【DATA】

スタッフ

原作:アイスキュロス/舞台監督:森下紀彦/照明:伊藤孝、大谷わかな/音響:suzy-9/衣装:梅原聡子

キャスト

プロメーテウス:古澤祐介/オーケアノス:滝田高之/イーオー:安田理英/ヘルメス:鍋島裕之/コロス(緑):松本萌/コロス(桃):島田桃依/コロス(橙):メイフィ/コロス(青):鈴木裕美/クラトス(権力):畦地亮佑/ビアー(暴力):宮崎隆一

『縛られた~』評リンク

北野研究室
 http://www.page.sannet.ne.jp/kitanom/theatre/shizuoka2005-5.html

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Comments

面白かったのですね。結局行けなかったけど、この作品も一度観てみたかったのですが、やはり私もこの手の作品はちょっと不安だなあ、という気もしてました。でもよかったみたいですね。舞台の雰囲気や音楽など、とても私も好きになれるような気が読んでいてしました。ネコさんの写真よいです!

これはお祭りみたいで、ホントに楽しかったです。ギリシャ悲劇でこんなに笑えるなんてね、って感じでした。

おお,ネコネコ...かわいいですねぇ.
私は犬にも反応しますので,そのうちよろしくです.(^^;)
おっと,本題からそれたコメントでごめんなさい.

ネコ、人気あるなぁ…ってことで、写真追加してみました。目つき悪いですね。(笑)

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