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« ギリシャのサマー・フェスティバル 2005 | Main | 『慈(めぐ)みの女神たち』 平松れい子 »

May 31, 2005

『エレクトラ』 仲田恭子

演出:仲田恭子
劇場:静岡芸術劇場
出演:空間アート協会ひかり
2005年05月29日 17:00~

写真は楕円堂、たたみロビーから見える景色です。

人工芝が貼られた舞台。
床の左半分にはオセロのゲーム盤に似た格子が描かれていて、白い服に白い髪の、双子のような人物が、向かい合ってかがんでいます。彼らは白黒に色分けられた円盤を、無言で裏返し続けているところ。

やがて現れたエレクトラも、同じく白い髪に、太腿も顕わな白い服。水を汲むために持ってきたのは、アポロンの首のような形をした黒い壷です。彼女は自分の身の上について、目を見開いて語り始めます。

劇が進行するにつれて、先ほどの双子のような人物がオレステスであることが分かります。オレステス本人の台詞を語っているかと思えば、次の瞬間にはオレステスの連れの老人になったり、親友のピュラデスになったり。ときにはエレクトラの台詞も現れます。
ああ、これはオレステスの、これまでの出来事の回想なんだ、ということが、演出ノートから分かりました。
彼らはこの間、立て膝で、すり足のようにしか移動しません。でも、速さもあり、とてもきれいな身のこなしでした。二人とも白い麦わら帽子をかぶっているので、眼差しは照明の陰になり、口元しか見えません。しぐさと台詞の調子だけで、二人のオレステスが何人かの人物を入れ替わりに再現するので、なにか幻惑されているような感じを受けます。

また、上演の間じゅう、微かに、途切れることのない音が、どこからか聞こえてきます。車軸の軋む音、ゆっくりと扉を叩くような音、冬の風、金属のこすれ合うような音であったりもします。耳障りで、不安をかき立てるような音です。

舞台上にいるエレクトラとオレステスは三人とも、とても美しい姿をしているのに、閉じ込められた空間と得体の知れない音の中で、尋常ならざる空気、怖さ、不安を感じさせました。

ものすごい緊張感!

仲田恭子さんの舞台について私は何も知らず、この日初めて見たのですが、ここまでですっかり彼女の世界に引き込まれてしまっていました。

後半に登場する姉弟の母、クリュタイムネストラも、期待以上の異様な風貌をしていました。彼女は黒い衣装を着け、闇の中から近づいてくるので、初めはその姿がはっきりしません。でもゆっくりと、エレクトラの嘘に呼び出されて、彼女の偽の出産を祝うためにやってくるのです。
徐々にその姿が光の中に見えてきます。カラカラとおもちゃの台車(乗ってきた馬車を表す)を牽きながら、晒のような白い布を手足に絡ませて、ぎこちないやりかたで歩いてきます。娘のために持ってきた花束は枯れています。頭にかぶった、黒い背の高い帽子は、芋虫の腹のようです。演じているのは、この芝居のために女性の名前をつけたという男の方でした。

怖い! すごい怖い! 泣きそう。私が子供だったら絶対泣く。

この、おぞましい外見をしたクリュタイムネストラは、エレクトラから見た母の姿なのでしょう。彼女の心の中にある、抑えがたい殺意や憎しみ、恨みなど、負の感情がそのまま母親に押し付けられたもののように見えます。だから、ここでもエレクトラとクリュタイムネストラは、口論しながらいつの間にか入れ替わってしまいます。どちらがどちらの主張をしているのか、時に分からなくなってしまう。二人が持っている怒りは、たぶん同じものだからです。
ラストシーンでは、エレクトラは黒い衣装に着替えて再登場しています。

クリュタイムネストラが殺害される瞬間は、場内の明かりが消え、悲鳴と雑音の混じったような音が、闇の中をサラウンドで襲ってきました。ぎゃーっ! マジ勘弁!

コロスのシーンはありませんでしたが、ディオスクロイ(ヘレネとクリュタイムネストラの兄弟の双子神)も現れて、アテネでの審判の予言をして去っていくまで、わりときっちりとエウリピデスの『エレクトラ』を再現していました。ディオスクロイは、ホットパンツのポリス・スーツを着た可愛いお姉さん(ミニスカじゃないのが残念)が、キック・ボードに乗って現れたので、正直少しホッとしてしまいましたが、とても楽しめる舞台でした。

当日券は早々に売り切れ、楕円堂には座ぶとん席、立ち見まで出て大盛況でした。きっと人気のある演出家なのでしょう。叶わないかもしれませんが、この舞台はもう一度見てみたいと思いました。


あ、えっと、この流れでここに書くのはすごく場違いな気もしますが、今日も貼ります、静岡ご飯シリーズ。
清水すし横丁 勇喜寿司の“まぐろづくし”。
http://www.dream-plaza.co.jp/amusement/sushi/sushi_01.html


【DATA】

スタッフ

原作:エウリピデス
演出:仲田恭子
美術:青木裕輔/照明:伊藤啓太、南出良治/衣装:多々良秀典、関谷誠子/音響:金子由布樹/メイク:ハコファクトリー

キャスト

エレクトラ:沢地優佳/オレステス:佐々木リクウ(ク・ナウカ)、須賀力/クリュタイメストラ:土肥艶子/デュオスクロイ:あきやまかおる、あきやまにごう/ピュラデス、老人、使いの者:オレステス

『エレクトラ』評リンク

現代演劇ノート~〈観ること〉に向けて
http://matsumoto.blog4.fc2.com/blog-entry-77.html
北野研究室
http://www.page.sannet.ne.jp/kitanom/theatre/shizuoka2005-4.html
矢崎屋伽藍堂
http://blog.goo.ne.jp/yazaki_ya/e/7a5eaffe1e05450acd2516878193e92f

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Comments

あ~、私もbounoさんの感想読んですごく引き込まれました。いつかどこかで必ず見たい!

わー、長いのに読んでくださってありがとうございます。雰囲気がちょっとでも伝わったみたいで良かったです。仲田さんは静岡と東京を中心に活動されてるみたいなので、私も気をつけていてみますね。“シャユカイ”で検索すると、仲田さんのBBSが見つかりますよ。

これは美味そうな寿司…やなくて、おもろそうですね!!文章からテンションの高さが伝わってきますわ。是非見てみたいもんですが…。またNHKあたりで放送してくれんもんかなあ。

カメラは入ってなかったみたいです…。この作品はさすがに、生で感じたほうがいいですよ。こんど上映される映画『エレクトラ』は、別物ですのでお間違いのなきように。(笑)
寿司も最高でしたよ。

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