2008年08月16日
アンフィ・シアター 『フェニキアの女たち』
日時:2008年07月25日(金)
場所:エピダウロス劇場
原作:エウリピデス
演出:スピロス・エヴァンゲラトス
出演:アンフィ・シアター
Αμφι-Θέατρο Σπύρου A. Ευαγγελάτου
Ευριπίδη, Φοίνισσες
http://www.greekfestival.gr/show_event?id=164&lang=gr
(mixi日記からの転記。加筆修正しています。)
あらすじは『テーバイ攻めの七将』(アイスキュロス作)とほぼ重なるもの。でも、使者の報告だけで話が進んでいく「七将」より、こちらのほうがだいぶドラマチック。『オイディプス王』『アンティゴネ』『コロノスのオイディプス』(ソフォクレス作)のエピソードも盛り込んで、エウリピデスが再構成したものです。
ソフォクレスの『オイディプス王』では、ことの真相を知ったイオカステ(オイディプスの母であり妻)は直ちに自殺してしまいます。オイディプスは子供らと引き離されて国外追放の身に。でも、この劇では子供たちが成人するまでイオカステは生きてます。オイディプスも追放されておらず、二人の息子に監禁されていることになっています。
劇の始まりは息子たちの王位争いから。テーバイの七つの門を攻めようとしているアルゴスの武将たちを、アンティゴネーが見に来ています。イオカステはエテオクレスとポリュネイケス兄弟を呼び出し、和解するよう説得しますが、交渉は決裂。クレオンの息子メノイケウスは、預言者テイレシアスから国を守るための犠牲となる運命を告げられ、自ら身を投げて死にます。エテオクレス、ポリュネイケス兄弟は相討ちで果て、イオカステは絶望のあまり後を追って自殺。二人の死を悼みつつ、クレオンはポリュネイケス埋葬禁止の触れを出しますが、反発したアンティゴネーは国を追われる父オイディプスと共にテーバイを去ります。
…と、あらすじを書いただけでも息切れしそうな、オイディプス伝説「全部入り」の劇。
タイトルの「フェニキアの女たち」は劇に登場するコロスのことで、テーバイを建国したカドモスがフェニキア出身ということで、その縁で登場しているそうです。
舞台装置は現代の戦場を思わせるもの。開始早々に銃声と爆撃音が流れたことからも明らかでした。台詞の中で、オイディプスとかフィボス(アポロン)とか言わなければ、現代ドラマを見ているようです。この上演のポスターやプログラムには古いモノクロ写真が使われていて、兵士に何かを訴える女性の姿が写っていました。時代が変わっても戦争に加わった息子たちを案じる母親を描こうとする、この上演の目指すところがよく分かりました。
感想はというと、やはり「盛り沢山」だなぁ、という印象。イオカステの仲裁場面だけでも十分見応えがありました。老いた母親の説得は、なるほど涙を誘います。
色んなエピソードが盛り込まれているので、見ている間は長く感じられて少々辛かったです。が、見所はたくさんあって、見終わってしばらくしてから、「いい芝居だったなぁ」としみじみ思い返すことの多い作品でした。登場人物が多いだけにそれぞれの出番が少なくなってしまうのですが、アンフィ・シアターの公演ではどのキャラクターもよく表現されていて、印象深いものでした。健気なクレオンの息子メノイケウスは可愛くて良かったし、好々爺風のテイレシアスも少ない出番ながら好演でした。コロスの歌とダンスも完成度が高かったです。
『フェニキアの女たち』という作品自体も、悪意を持った登場人物が少なくて優しさにあふれた劇に感じました。共感しにくい主張をしているのは現王のエテオクレスだけで、他の登場人物は身内を思いやり、なんとか最悪の結果を避けようとしているように思えました。あ、でも確かオイディプスが息子たちを呪って、刺し違えることを望んだ張本人だった。(笑)
客入りは6割ていどと少なめでしたが、良い舞台でした。土曜日の方が人出はあるのかな。
[参考文献]
『ギリシア悲劇IV エウリピデス(下)』 ちくま文庫 1996年 第三刷
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